要点まとめ
- — 遺産税の申告期限は、被相続人の死亡の翌日から起算して6か月以内です。 被相続人の戸籍所在地を管轄する国税局に申告します。正当な理由があれば、期限前に申請して3か月まで延長できます。
- — 納税義務者は相続人と受遺者です。 遺言執行者がいる場合は、遺言執行者が代わって申告・納付できます(2026年9月改正後の遺産及び贈与税法第6条)。
- — 2026年の免税額は1,333万台湾元です。 税率は10%、15%、20%の3段階で、区分は5,621万元と1億1,242万元です。
- — 相続による不動産の移転には、土地増値税も契税もかかりません。 ただし遺産分割協議書で登記する場合は、不動産の分割部分に0.1%の印紙税がかかります。
- — 相続人は原則として遺言に基づいて相続登記を申請できます。受遺者は単独では申請できず、相続人または遺言執行者と共同で申請する必要があります(土地登記規則第123条)。
- — 相続登記は相続開始の日から6か月以内に申請します。 遅れると、1か月ごとに登記費用の1倍の過料が科されることがあり、上限は20倍です(土地法第73条)。
- — 遺言を作る段階で執行の方法まで考えておくこと。 誰が遺産税を申告するか、誰が銀行や地政事務所の手続をするか、相続人が協力しないときに誰が進めるか、です。
本稿は遺言シリーズの下編です。上編台湾で遺言を作成するには:5つの方式、証人の要件と特留分(上)では遺言の成立要件と種類を取り上げました。下編では、遺言の執行方法と関連する法律・税務の問題を説明します。
遺言を作った後、死亡後はどう執行するのか
遺言の作成は第一歩にすぎません。本当に問題が起きやすいのは、遺言者が亡くなった後です。
- — 「遺言書を手にしたら、どこへ行けばよいのか」
- — 「遺言書を持って地政事務所に行けば、すぐに家の名義を変えられるのか」
- — 「先に税金を納める必要があるのか」
- — 「家を相続人ではない人に残した場合は、どうすればよいのか」
ここからが「遺言の執行」の段階です。
一、死亡後にかかる可能性のある税
中心になるのは遺産税(日本の相続税に相当)です。以下、3点に分けて説明し、その後に不動産の移転に伴うその他の税を取り上げます。
遺産税:申告期限と申告する人
被相続人が死亡したときは、納税義務者は被相続人の死亡の翌日から起算して6か月以内に、被相続人の戸籍所在地を管轄する国税局に遺産税を申告しなければなりません(遺産及び贈与税法第23条)。正当な理由があって期限内に申告できないときは、期限前に書面で延長を申請でき、延長は3か月が限度です(第26条)。
誰が申告するかについて、2026年9月に改正された遺産及び贈与税法第6条は次のように定めています。
- — 納税義務者は相続人および受遺者
- — 相続人がいないときは遺産管理人
- — 遺言執行者がいる場合は、遺言執行者が納税義務者に代わって遺産税の申告・納付をすることができる
遺産税:遺産の評価方法
遺産は原則として被相続人の死亡時の時価で評価します(第10条)。遺産は大きく不動産と動産に分かれます。不動産は土地と建物、動産は現金、預金、株式、債権、金、骨董、自動車・バイクなどで、不動産以外の財産は基本的に動産に含まれます。主な項目の評価方法は次のとおりです。
| 区分 | 項目 | 評価方法 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 不動産 | 土地 | 死亡時の公告土地現値 | 土地登記謄本に記載された公告土地現値を参照 |
| 不動産 | 建物 | 死亡時の房屋評定標準価格 | 房屋税籍証明に記載された房屋現値を参照 |
| 動産 | 現金 | 死亡時の実際の金額 | — |
| 動産 | 預金 | 死亡日の預金残高 | 死亡日までの経過利息を含む |
| 動産 | 上場・店頭株式 | 死亡日の終値 | — |
| 動産 | 興櫃(エマージング)株式 | 死亡日の加重平均約定価格 | — |
| 動産 | 非上場株式 | 死亡日の会社の純資産価額 | — |
| 動産 | 金 | 死亡時の市場価格 | — |
| 動産 | 自動車・バイク | 死亡時の時価 | 実務では同年式・同型車の市場相場を参考にする |
遺産税:計算方法
簡単に言えば、遺産総額 - 免税額 - 控除額 = 課税遺産純額で、この純額に累進税率を適用します。2026年の例は次のとおりです。
| 項目 | 金額・税率 |
|---|---|
| 免税額 | 1,333万元 |
| 主な控除額 | 配偶者 553万元、直系卑属1人につき 56万元、父母1人につき 138万元、葬儀費用 138万元 |
| 税率 | 課税遺産純額 5,621万元以下:10%、5,621万元超 1億1,242万元以下:15%、1億1,242万元超:20% |
これらの金額は消費者物価指数に応じて調整されます。財政部が公告する、被相続人の死亡年度に適用される金額によってください。
特に注意する点:
- — 貸金庫:被相続人が生前に金融機関の貸金庫を借りていた場合、相続人が自分で開けてはいけません。先に国税局に通知し、立会いのうえで内容の点検・記録を受ける必要があります(第40条)。後日の争いを防ぐためです。
- — 分割前の遺産は相続人全員の公同共有(合有)です:相続人の1人が勝手に処分・使用するのは避けてください。たとえば被相続人のキャッシュカードや印鑑で預金を引き出す、被相続人の自動車を勝手に処分するといった行為は、民事上の責任のほか、刑法に触れる可能性もあります。
建物・土地の相続:土地増値税と契税は不要、ただし印紙税がかかる場合がある
最もよく尋ねられる点です。不動産が「相続」によって移転する場合、
- — 土地:相続による土地の移転には、土地増値税が課されません
- — 建物:相続は契税の課税対象ではありません
つまり、相続の手続だけであれば、通常の売買や贈与のように土地増値税や契税が別途発生することはありません。
ただし、被相続人の建物・土地に房屋税や地価税の未納がある場合は、通常、未納の確認と完納を済ませてからでなければ、その後の登記を進められません。
印紙税は、実際にどの方法で手続をするかによって異なります。
| 手続の方法 | 印紙税 |
|---|---|
| 法定相続分に従って相続登記をする(遺産分割協議書は不要) | 不要 |
| 遺言に基づいて相続登記をする | 不要。遺言書そのものは印紙税の課税対象ではない |
| 遺産分割協議書に基づいて分割相続登記をする | 協議書のうち「不動産」の分割部分について、協議成立時の価額の0.1% |
| 不動産を受遺者に遺贈する | 実務上、税務機関は遺贈部分も納付が必要としている。事前に不動産所在地の税務機関に確認することを勧める |
二、遺言書を持って地政事務所に行けば、そのまま相続登記ができるか
答える前に、2つの用語を説明します。
| 用語 | 説明 |
|---|---|
| 相続人 | 法律上もともと相続権を持つ法定相続人。たとえば被相続人の配偶者、子など。 |
| 受遺者 | 遺言に記載され、遺贈によって遺産の全部または一部を取得する人。通常は相続人以外の人。たとえば、一人暮らしの高齢者が長年介護をしてくれた人に遺言で財産を遺贈する場合や、結婚していない長年のパートナー同士が互いを受遺者に指定する場合。 |
本題に戻ります。相続人や受遺者は、遺言書を持って地政事務所に行けばそのまま登記できるのでしょうか。答えは、場合によります。大きく2つの場合に分かれます。
場合1:不動産を、もともと法定相続人である人に分ける
この場合、遺言は法定相続人の間での遺産の分け方を指定しています。地政実務では、遺産税の申告・納付を済ませ(完納証明または免税証明を取得し)、関連する手続を終えた後であれば、原則として遺言の内容に従って地政事務所に「遺言による相続登記」を申請できます。遺言執行者が指定されていて、他の相続人が協力しないときは、遺言執行者が遺言の内容に従って相続人を代理して申請でき、他の相続人の同意は要りません。
実務上の補足:最近、最高法院はこれと異なる見解の判決を出しています。法定相続人であっても遺言書だけで単独登記はできず、受遺者と同じく他の相続人に共同での手続を求めるべきだというものです(最高法院114年度台上字第1798号民事判決)。「遺産分割方法の指定」に物権的効力があるかという論点に関わる複雑な問題であり、本稿では立ち入りません。
場合2:遺言で家を受遺者に残す
土地登記規則第123条第1項が明確に定めています。その内容は次のとおりです。受遺者が遺贈による土地所有権移転登記を申請するには、相続人がまず相続登記を済ませたうえで、相続人が受遺者と共同で申請する。遺言で遺言執行者が指定されているときは、遺言執行者の登記と相続登記を済ませた後、遺言執行者が受遺者と共同で申請する。
要するに、受遺者は相続人または遺言執行者に求めて、共同で遺贈の所有権移転登記を申請してもらう必要があります。受遺者が遺言書を持って単独で地政事務所に行っても、登記はできません。
三、遺言がある場合、実際の執行はどう進むか
一般的な案件は、次の流れで理解できます。
- 被相続人が死亡する。
- 遺言の有無、遺言が有効かどうかを確認する。
- 遺言執行者の指定の有無を確認する。
- 相続人、受遺者の全員を確定する。
- 遺産と債務を調査する:建物、土地、預金、株式、保険、出資持分、債権、借入金など。
- 遺産税を申告する:原則として死亡の翌日から起算して6か月以内(3か月の延長を申請できる)。
- 遺産税を納付する。または免税その他の証明を取得する。
- 地方税の未納を確認する:房屋税、地価税など。
- 遺言の内容に従って財産ごとに手続をする:不動産は地政事務所、預金は金融機関、株式は証券会社および集中保管の手続、会社の持分は会社および主管機関の手続。
- 相続人以外への遺贈がある場合は、遺贈財産の引渡しまたは移転の手続をする。
- 遺言の執行が完了する。
登記の期限:不動産の相続登記にも期限があります。土地法第73条第2項により、相続登記は相続開始の日から6か月以内に申請することができ、期限を過ぎて申請した場合は、1か月遅れるごとに登記費用の1倍の過料が科されることがあり、上限は20倍です。
四、「遺言の作成」と「遺言の執行」を一緒に考えるべき理由
多くの遺言で本当に問題になるのは、本人が意思を書き残さなかったことではありません。「誰に財産を渡すか」だけを考え、次の点まで考えていなかったことです。
- — 「相続」なのか「遺贈」なのか
- — 他の人の特留分を侵害していないか
- — 建物・土地の表示は十分に明確か
- — 株式や会社の持分をどう移転するか
- — 借入金その他の債務はないか
- — 誰が遺産税を申告するのか
- — 誰が銀行、国税局、地政事務所の手続をするのか
- — 相続人が協力を拒んだとき、誰が執行を続けるのか
本当に役に立つ遺言は、「財産を最後に誰に渡すか」だけでなく、後でどう執行するかまで考えたものです。
財産も相続人の関係も単純な家庭であれば、自分で進めることももちろん可能です。しかし、複数の不動産、会社の持分、相続人以外への遺贈、再婚家庭、相続人が国内外に分かれている場合、あるいは家族の間にもともと対立がある場合は、遺言を作る段階で弁護士が遺言の内容、相続関係、特留分を確認し、そのうえで公証人が公証の手続を行うのが望ましい方法です。後日、不動産登記が必要になったときは、地政士が手続を支援できます。
遺言の目的は、紙を1枚残すことではありません。
本当に完全な遺産の計画とは、生前に意思を明確にしておき、死亡後にもその意思を最後まで実行できる人がいることです。
本稿の法令は2026年10月1日現在のものです。台湾法(中華民国法)が適用される相続を対象としています。
共同執筆:胡大中 弁護士|遠東聯合法律事務所
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よくある質問(FAQ)
遺産税はいつまでに、誰が申告しますか
被相続人の死亡の翌日から起算して6か月以内に、被相続人の戸籍所在地を管轄する国税局に申告します。正当な理由があって期限内に申告できないときは、期限前に書面で申請すれば3か月まで延長できます。納税義務者は相続人および受遺者で、相続人がいないときは遺産管理人です。遺言執行者がいる場合は、遺言執行者が代わって申告・納付できます(遺産及び贈与税法第6条、第23条、第26条。2026年9月改正)。
2026年の遺産税の免税額と税率は
免税額は1,333万元です。主な控除額は、配偶者553万元、直系卑属1人につき56万元、父母1人につき138万元、葬儀費用138万元です。遺産総額から免税額と控除額を引いたものが課税遺産純額で、5,621万元以下は10%、5,621万元超1億1,242万元以下は15%、1億1,242万元超は20%です。これらの金額は物価指数に応じて調整されるため、財政部が公告する死亡年度の金額によってください。
建物や土地を相続すると、土地増値税や契税がかかりますか
かかりません。相続による土地の移転は土地増値税が免除され、相続は契税の課税対象でもありません。ただし、被相続人に房屋税や地価税の未納があれば、未納を確認して完納してからでなければ登記できません。印紙税は手続の方法によります。法定相続分による相続登記や遺言に基づく相続登記では不要ですが、遺産分割協議書を使う場合は、協議書のうち不動産の分割部分について価額の0.1%を納めます。
相続人は遺言書を持って地政事務所に行けば名義変更できますか
遺言が不動産を法定相続人に分けるものであれば、地政実務では、遺産税の申告・納付を済ませて完納証明または免税証明を取得した後、原則として遺言の内容に従って相続登記を申請できます。遺言執行者が指定されていれば、遺言執行者が代理して申請できます。ただし最近の最高法院判決には、相続人も他の相続人に共同での手続を求めるべきだとする異なる見解があります。個別の案件では、地政機関と裁判所の最新の取扱いを確認してください。
遺言で家を相続人以外の人に残した場合、名義変更はどうしますか
受遺者が遺言書だけで単独で登記することはできません。土地登記規則第123条第1項により、相続人がまず相続登記を済ませ、そのうえで相続人が受遺者と共同で遺贈の所有権移転登記を申請します。遺言で遺言執行者が指定されているときは、遺言執行者の登記と相続登記を済ませた後、遺言執行者が受遺者と共同で申請します。遺言で遺言執行者を指定しておけば、後日相続人が協力しないという問題を避けられます。
相続登記に期限はありますか。過ぎるとどうなりますか
あります。土地法第73条第2項により、相続登記は相続開始の日から6か月以内に申請することができ、期限を過ぎて申請すると、1か月遅れるごとに登記費用の1倍の過料が科されることがあり、上限は20倍です。登記の前に遺産税を申告して完納証明または免税証明を取得する必要があるため、早めに準備を始めるべきです。
被相続人の預金や貸金庫を、相続人が先に引き出したり開けたりできますか
勧められません。分割前の遺産は相続人全員の公同共有であり、相続人の1人が勝手にキャッシュカードや印鑑で預金を引き出すと、民事上の責任のほか刑法に触れる可能性があります。貸金庫は、先に国税局に通知し、立会いによる点検・記録を受けてから開けてください(遺産及び贈与税法第40条)。内容物をめぐる後日の争いを防ぐためです。
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